公正証書遺言の勧め

遺言ブームと称される昨今、書店に行けば遺言にまつわる書籍や遺言書作成キットを手に入れることができます。
まだ先の事とは思いつつ、遺言書を作成しておくべきか悩んでいる方も多いのではないでしょうか。

一般的に遺言書を作成する必要性が高いとされるのは、次のようなケースです。

① 夫婦の間に子がいない場合
② 法定相続人となる者同士が不仲な場合
③ 法定相続人以外の者に遺贈したい場合
④ 相続人不存在の場合
⑤ 特定の子供に特定の財産を引き継がせたい場合(事業承継等)

 

上記の中で、数多くの相続案件に携わってきた司法書士として、特にお勧めしたいのが、①夫婦の間に子がいない場合です。

例えば、子供のいないAB夫婦のうちAが亡くなったとします。
既にAの両親(直系尊属)も亡くなっているとすると、配偶者BとAの兄弟姉妹Cが法定相続人となります。(Bの相続分は4分の3、残りの4分の1がCの相続分です。)
※兄弟姉妹が既に亡くなっている場合は、その子が相続権を取得します。

 

さて、Aの目ぼしい遺産が自宅のみだったとしたら、どうなるでしょうか。
Cが相続放棄してくれれば良いですが、相続分を主張された場合、Bは次の3つの中から選択を迫られることになるでしょう。
① B自身の預貯金からCへ相続分に見合う現金を支払う。
② 自宅をBとCが共有で相続する。
③ 自宅を売却し、相続分通りに売却代金を分ける。

どの選択をしても、その後のBの生活を脅かすことになります。
こんなとき、Aが「全財産をBに相続させる」旨の遺言をしていれば、兄弟姉妹には遺留分がないので、Cの相続分をなくすことができるのです。

遺留分とは?

民法で定められている一定の相続人が最低限相続できる財産のこと。
遺留分を侵害する遺言自体は無効ではないが、遺留分を有する相続人が遺留分侵害額請求という主張をすれば、遺留分を侵害する財産を受けた者は、遺留分侵害額請求をした相続人に対し、侵害額相当の金銭を支払わなくてはならない。

また、遺言は公正証書で作成することをお勧めします。
自筆証書遺言は、費用もかからず、手軽に作成できるメリットはありますが、相続が発生した後、検認という家庭裁判所の手続を経なければなりません。
検認手続は、申立自体が面倒なだけでなく、法定相続人全員を家庭裁判所へ招集することになるため、残された配偶者にとって負担となります。

検認とは?

相続人に対し遺言の存在及びその内容を知らせるとともに、遺言書の形状、加除訂正の状態、日付、署名など検認の日現在における遺言書の内容を明確にして遺言書の偽造・変造を防止する手続。

公正証書遺言であれば、検認も不要で、相続手続も簡便となります。
また、自筆証書遺言に比べ、公証人や証人2名が関与するため遺言自体の真実性も高く、結果として無用な争いを防止することにも役立ちます。

※令和2年7月10日、自筆証書遺言を法務局で保管する制度が施行され、この制度を利用すると家庭裁判所での検認手続は不要となります。但し、遺言により財産を承継する方は、本人が亡くなられた後、戸籍類一式を用意して、法務局で「遺言書情報証明書」の交付請求を行わなくてはならず、その後、法務局はその他の相続人等に対し遺言書の保管の事実を通知します。つまり、相続発生後の手間は、相続人の招集がないことを除き、検認手続と大差がないということです。従って、本人の死後事務の簡便さの観点からは、今後も公正証書遺言の優位性は失われないと考えております。

但し、適切な遺言書を作成しないと遺言が原因で法定相続人間に軋轢を生じさせることもありますので、法定相続分・特別受益・寄与分及び遺留分侵害額請求権の可能性を検討し、同時に家庭内の事情や相続税の負担も考慮の上、内容を決めなければなりません

寄与分とは?

共同相続人の中で、被相続人の財産の維持・増加に特別の寄与をした者がいるときに、公平を図ることを目的として、相続財産からその寄与分を控除したものを相続財産とみなして各相続人の相続分を計算し、寄与者にその控除分を取得させる制度。

特別受益とは?

共同相続人の中で、被相続人から「遺贈」又は「婚姻のための贈与・養子縁組のための贈与・生計の資本としての贈与」を受けた者がいるときに、公平を図ることを目的として、遺贈分や贈与分を相続財産に加算して、相続分を計算する制度。

遺言書作成に興味がある方、相続について心配がある方は、ぜひ専門家にご相談ください。

  自筆証書遺言 公正証書遺言
メリット

特別な費用が掛からない。

気軽に何度でも書き直せる。

法務局での遺言保管制度(令和2年7月10日施行)を利用することにより下記デメリットを概ね解消することができる。但し、保管申請ができるのは本人のみで、代理人が行うことはできない。

方式の不備や遺言作成能力を原因として遺言が無効になる可能性が低い。

公証役場に遺言書原本が保管されるため、遺言書を紛失しても謄本を再発行できる。(遺言検索システム有)

相続手続が簡便に行える。

文字を書くことができなくても作成可能。

公証人に出張してもらうことも可能。

デメリット

方式不備により無効になることがある。

偽造・変造・紛失の怖れがある。

高齢者の遺言については、遺言作成能力を争われることも多い。

検認が必要となる。

公証人手数料等の費用が必要となる。

証人2名が必要になるため、守秘義務のある専門家以外が証人となった場合には、遺言内容の秘密が守られないことがある。

公正証書遺言の作成の詳細については、こちら

 

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